SOAP
偶然に目を向ける
約4000年前、シュメール人が浜辺で熾した火の中で、砂粒と植物の灰が偶然に結びつき、ガラスが生まれたとされています。また、長い年月をかけて川に堆積した動植物の脂とソーダ灰から生まれた石鹸は、古代ローマ時代より人々の暮らしの中で用いられてきました。私たちは、ガラスと石鹸が辿ってきた変化の過程に注目しました。植物の灰(ソーダ灰)が熱によって砂と結びつきガラスとなること、石鹸が溶け、泡となり、やがて消えていくこと。生まれた場所や時代は異なっていても、ガラスと石鹸はいずれも、火と灰を起点に姿を変えてきました。
残る/消える
SOAP オブジェは、二つの素材が辿ってきた変化の過程に目を向けることから生まれました。硬く定着するガラスと、溶け、形を失い、やがて消えていく石鹸。対照的な性質をもつ二つの素材を通して、「残ること」と「消えること」のあいだに現れる感覚を見つめています。
痕跡を楽しむテクスチャ
SOAP は固定された形ではなく、時間とともに移ろう状態を前提としています。表面に残るわずかな揺らぎや、指先に触れる手がかりを、静かな量感として手元に留めること。なにげなく身近にある素材が、遠い時代や場所での偶然によって生まれてきたことを思い出しながら、痕跡を残さないものの可能性を、手元で静かに確かめるオブジェです。