先日、CIBONEさんにアトリエでインタビューしていただいた内容が、Behind The CASEに掲載されています。
Gleicheniaの制作プロセスや、今回の展示で発表している作品のコンセプトについてなどお話ししました。以下のテキスト、リンクよりご覧いただけます。
ーーBehind The CASEーー
CIBIONE CASEでは初となる今回の展示では、「光の痕跡」をテーマにCAIRNとIN WATERの2つのシリーズをご紹介いたします。
彫刻と空間という、それぞれのバックグラウンドを活かした表現をどうすればうまく融合できるかを模索する中で、技術やデザイン、コンセプト、セオリーといった様々な要素を、ミニマムに表現の中に凝縮することができるジュエリーという存在に魅力を見出した二人は、これまで様々な素材の組み合わせを試み、まだ見ぬ表現を求めて手を動かし続けてきました。
その中で辿り着いたガラスという存在は、彼らにとって最も「光」を感じることができる素材であると話します。
二人の視点や感性が生み出すコレクションは、普遍的な記憶やエピソードからはじまり、その小さなきっかけとなった一滴が、やがて大きな川の流れとなっていくように、連続性をもって今も広がり続けています。
本展示では、川のほとりに佇む石や、その傍をゆったりと流れる水に、光が差し込むことむことで見えてくる美しい造形やシルエット、そして作品がもつストーリーを感じられるようなオブジェとジュエリーを、新作も含めて発表いたします。
川辺や登山道に、人の手によって積み上げられた「CAIRN(ケアン)」と呼ばれる石をインスピレーションに生まれたシリーズは、単なる造形物としての美しさだけではなく、無関係のように見えるもの同士の間に物語性があることに意味を感じるといいます。
思うままに積み上げたものの上に、また誰かが積み、またその次の人の道標へと繋がっていく。
そこに正解やルールはなくても、時間をかけて積み重なる中で自ずと造形として立ち上がってくる様は、彼らの制作プロセスそのものに通じていると感じます。
これまでの軌跡とこれから歩みの道標になるように、というメッセージが込められたCAIRNは、手にする人が思い描くそれぞれのストーリーに寄り添ってくれるような、優しい光を内包しています。
IN WATERシリーズは、窓硝子に使われるガラスが結晶化することで不透明になる「失透」という、一般的には良品としてみなされない現象を、あえて作品の個性とし、川の水流のように、澄んでいる部分と淀んでいる部分を表現しています。
このシリーズは、ガラスと石鹸の起源に共通点を見出したことがはじまりでした。
長い年月を経て水の中で形成された砂粒と植物の灰が溶融し、固化することから生じたといわれているガラスと、羊の脂と灰が浸透した土が、雨に流され川に堆積したことで誕生したといわれる石鹸。
この成り立ちに着想を得て制作された、今まさに水をくぐってきたような瑞々しさと手にしっとりと馴染むフォルムのSOAPというガラスのオブジェは、石鹸のように、本来であれば徐々に失われていくものの魅力に思いを馳せた作品です。
これらのシリーズは、フランス語で「ガラスの練り粉」の意味を持つ、パート・ド・ヴェールという古代から伝わる鋳込みのガラス技法が用いられています。
石膏でつくった原型にガラス粉を詰めて焼成することで、細かな気泡が入り、奥行きのある独特な質感が生まれます。
ガラスの特性や大きさ、調合する色の相性などによって、作品ごとに必要な時間や温度調節も異なる為、伝統技法や既存のやり方に捉われない方法でアプローチを続ける彼らにとっては、ひとつひとつが実験的で好奇の対象であり、偶然とコントロールの間で生まれるものにこそ、価値を感じると話します。
石膏型は作品を取り出す時に壊してしまう為、再び同じものをつくることはできません。
その儚さと、作品ができあがるまでに掛けられた時間、そして二人が手を動かし続けてきたことの結晶が、唯一無二の魅力を放ちます。
意図しないものから生まれる創造性や、ふとした時に起きる異なるものとの偶発的な融合は、時に経験や知識を超えて、新たな感性をもたらしてくれることがあります。
Gleicheniaの二人はその瞬間を見逃さず、好奇心を持って受け入れ、つぶさに観察を続けることで、異なる資質をもっている者同士だからこそ生み出せる奥行のある景色を見せてくれます。
彼らが織りなす「光の痕跡」を、ぜひこの機会にご覧ください。
https://www.cibone.com/news_exhibition/8641/
- 『Traces in Flowing Light』
CIBONE CASE @cibone_tokyo
会期 : 2025年6月7日(土) - 6月22日(日)
時間 : 10:30-20:30
場所:東京都中央区銀座6丁目10−1 GINZA SIX 4F